未来小説「ニューライフ」マスクに隠されたもの

 2030年10月晴れた新宿戸山公園真昼間、女性の悲鳴が響き渡った。しばらくしてパトカーが来て数名の警察官が中年男を取り囲み、その周りを10名ほどの野次馬が集まっていた。そして警察官たちは中年男をパトカーで連れ去って行った。
 10年前中国武漢で発生した新型コロナウイルスCOVID:A型は世の中を大きく変えてしまった。その時始まったニューライフ政策でこの公園は人がまばらだ。
 WHOは世界の非難を浴びた中国に査察団を出したが、中国は巧妙な隠蔽を行った上に、WHOは中国政府におもねっておざなりな調査しかしなかった。
 そして2年後別の種類である新型コロナウイルスCOVID:B型が中国で発生し世界はCOVID:A型の時と同じように各国でロックダウンとなった。
 あれから10年の間に新型コロナウイルスはC型まで発生し、そのたびに世界の各国はロックダウンを繰り返してきている。しかも同じ新型コロナウイルスの第二波、第三波が来てこの10年世界の経済成長はほぼゼロになっている。
 今世界はコロナウイルで二つに分断されている。それはアメリカを中心とした反中国諸国と、親中国諸国ではない。
 世界の半数の国は「集団免疫方式」を取って病床数をコントロールしながら国民全体が免疫を得ていく方針を取った。米国、英国、ドイツ、スウェーデンなどは相当数の死者を出しながらも免疫を得たので、これら免疫を得た国々の間で貿易が行われ経済がブロック化された。その結果これらの国々では2020年以前と同じレベルの経済成長を続けている。
 一方でウイルスを完全に撲滅する方式を取ったニュージーランド、韓国、台湾はこの10年人の出入りを禁止したためほぼ鎖国状態が続いている。最近ようやく非免疫方式国同士での人の出入りが始まっているが、それぞれの国の経済は極度に低迷している。
 日本も緊急事態宣解除のあと再び感染が広まったので世論に押されて緊急事態宣言を再び出して経済を止めてしまった。日本国内での感染者は少ないが免疫保持者がいないので今更国境を開けることはできない。開けた途端A,B,C3種類の新型ウイルスが入ってきて大量の死者を出すことになるからだ。
 結果としてこの10年日本の経済は毎年マイナスまたはゼロ成長となり、倒産が増え毎年5万人以上の自殺者が出ている。
 当時提案された「ニューライフ」政策を国民は忠実に実践し生活に浸透している。テレワークは広まり飲み屋にはみんな行かなくなった。隣の歌舞伎町は今は廃墟同然となっている。マスクは外出では必須アイテムとなりカラフルでおしゃれなもの出回っているし、中近東風のブルカのように頭全体を覆い隠すデザインのようなものもある。
 そのような経緯でこの戸山公園に多くいた早稲田の外国人留学生は今はほとんどみかけなくなった。公園で遊んでいたこどもたちや散歩していた老人たちもまばらだ。なぜなら公園に入る人数が規制されていて新宿区から配布されるチケットを入口で渡さなくてはならないからだ。
 どうも露出狂らしい。その中年男は公園の真ん中で数人の女性の前で局部を露出させて110番通報されたらしい。
 聞けば数人の女性の前でマスクを取って口と鼻を露出したようだ。
 この10年国民は外出するときにマスクをすることが普通になってマスクを人前で外すことに羞恥心を覚えるようになってしまった。今は外でマスクを外すと軽犯罪法違反になる。
 最近シースルーのマスクが出て来てて若い女性が透けたマスクをしているとすごい色気を感じていた矢先だった。

2030年10月16日(水曜日)