未来小説「ニューライフ」凛子の不思議その2
凛子の不思議その2
タクシーは神楽坂から一本入った道で留まった。料金をカードで支払って彼女を支えて寮を探す。
寮長とやらに事情を説明して後の面倒を見てもらわないといけない。
コロナウイルス発生後東京の地価は下がる一方で最近優良企業は安い東京都心の土地を見つけて人材確保のために寮にしている。
抱えながら入り口までたどり着いた。
低層階の普通のマンションにしか見えない。鍵はもっているのかと聞くと彼女は鞄からカードを取り出して英知に渡した。
カードに204と数字が書いてある、彼女にこれは部屋番号なのかと聞いても答えない、ともかくエレベーターで204号室まで行ってカードを差し込むとドアが空いた。
ドアを開けたが電気のスイッチがどこにあるのか分からない。暗闇の中で彼女をソファーに寝かせた。
何やらよく分からないが、ここは彼女が大丈夫なのを確認したら退散したほうがいい、いやそうに決まっている。寮長はいなかったが男性禁止の寮のはずだ。
もしかするとこれは何かの罠かもしれない。事がかように運ぶことなどない、いや運んではいけない。ここで彼女に手を出したら突然騒がれて男が出て来て脅されるのかもしれない。
いや罠でなかったとしても本当に酔っぱらっていたら手を出して彼女がその気でなくて騒いだらとんでもないことになる。
そう思って、周りを見回したが家具の影が見えるだけでなにがどこにあるのか分からない。どうも小ぎれいなマンションの一室であることと、一人暮らしにしてはかなり広い部屋だということは分かる。
息苦しそうだ、暗闇だからマスクを外しても叱られないだろう。そっと彼女のマスクを外した。
きれいだ、目が暗闇に慣れてきたのとかすかカーテン越しからかすかに入る光で見えた。
マスクを外した彼女はきれいだ、とてもきれいだ、だが、ただ、、、
だがダメだ。
入口に防犯用のカメラもあったし警備員が来るかもしれない、今なら看病でやむなく入って来たと言い訳ができるが朝までいたら大変なことになるかもしれない。手探りでクッションを探し彼女の枕にして体を横向けた。
今すぐに出たほうがいい、
そう思って立とうとした瞬間、英知は左腕を引っ張られ不意を受けてソファに倒れこんだ。
倒れこみながら英知は不思議と大丈夫かもしれないと思っていた。
2030年10月23日